トレーナーとして多くの方と向き合ってきて、ずっと感じてきたことがあります。
「なぜ同じアドバイスをしても、変わる人と変わらない人がいるのか。」
食事管理も、トレーニングメニューも、理屈はみんな同じように教えています。でも結果は、人によって全然違う。
その答えを探していたとき、出会ったのがアドラー心理学の「ライフスタイル」という概念でした。
「ライフスタイル」とは何か
アドラー心理学でいう「ライフスタイル」は、日常語の「生活習慣」とは少し違います。
食事や睡眠の習慣ではなく、もっと根っこにあるもの。
「自分とはこういう人間だ」「世界はこういう場所だ」「他者とはこう関わるべきだ」── そういった信念・価値観・思考のパターンの総体が、ライフスタイルです。
たとえばこういうことです。
| 日常語のライフスタイル | 「朝ごはんを食べる」「週3回運動する」など、行動レベルの習慣 |
| アドラーのライフスタイル | 「自分は意志が弱い人間だ」「運動は続かないものだ」という、根底にある信念・物語 |
アドラーはこのライフスタイルが、人がおよそ幼少期に形成する「自分なりの人生の解釈」だと言いました。
そしてそれは、本人も気づかないうちに、すべての行動・感情・選択に影響を与え続けています。
トレーナー視点で見えてきたこと
── 「続かない」のは意志の問題ではない
「自分は意志が弱いから続かない」という言葉を、何十回聞いてきたか分かりません。
でも私は今、それを聞くたびに思います。「意志の弱さ」じゃないんだ、と。
アドラーの目的論から見ると、人は理由なく行動しているわけではありません。
「続かない」にも目的がある。たとえばこういったことです。
- 失敗する前に止まることで、「やればできる」という可能性を手放さないで済む
- 「忙しくて続けられなかった」と言えば、本気じゃなかったことを正当化できる
- 変わらないことで、今の人間関係や環境が安定したままでいられる
これらは責めているのではありません。人は誰でも、今のライフスタイルを守る理由を持っている。
そこを無視して「もっと頑張れ」と言っても、何も変わらないんです。
── 「変われない」のか、「変わらないを選んでいる」のか
アドラーはこう言っています。
「あなたが変わらないのは、変われないからではない。変わらないと決心しているからだ。」
最初にこれを読んだとき、正直、少し怖かった。
でも同時に、すごく希望を感じました。
「変われない」は固定されていますが、「変わらないを選んでいる」なら、選び直せる。
ライフスタイルは変えられる。ただしそこには、アドラーが言う「勇気」が必要です。
ライフスタイルが変わる瞬間
私がトレーナーとして最もうれしい瞬間は、お客さまの体が変わったときではありません。
「あ、私って変われるんだ」という顔をするとき。
それは案外、劇的な場面ではないことが多い。
雨の日でもウォーキングできた日。
「どうせ続かない」と思っていた筋トレが、気づけば3ヶ月続いていた日。
食事を少し意識したら、なんとなく気分が違った日。
そういう小さな「できた」の積み重ねが、「自分はこういう人間だ」という信念を書き換えていく。
それが、アドラーの言う「ライフスタイルの変化」だと私は思っています。
行動が変わるから信念が変わるのではなく、小さな行動の積み重ねが、やがて「自分」の物語を書き換えていく。
私がセッションで大切にしていること
この視点を持ってから、私のセッションのあり方は変わりました。
── 正しいやり方より、「なぜやるか」を先に聞く
体重を落としたい。筋肉をつけたい。健康でいたい。
どれも正しい動機です。でもその先に、何があるのか。
「体が変わったら、どんなことをしてみたいですか?」
この一言が、ライフスタイルの変化を後押しする一番大事な問いだと思っています。
「孫と全力で遊べる体になりたい」「もう一度、自分に自信を持ちたい」「健康でいることが家族への恩返しだと思っている」──
そういう言葉が出てきたとき、トレーニングは単なる運動ではなくなる。その人の「ライフスタイルを変える動機」になる。
── 課題の分離 ── 私の仕事と、あなたの仕事
アドラーは「課題の分離」という考え方を提唱しました。誰の課題かを明確にすること。
私の仕事は、知識と技術と環境を提供することです。
でも「変わるかどうか」は、最終的にあなたの課題です。私が決めることはできない。
だから私は、「もっとやれ」とは言いません。「なぜやりたいのか」を一緒に探すことに、時間を使います。
その問いの答えが見つかったとき、人は驚くほど自分から動き始める。
おわりに
アドラーはこんな言葉も残しています。
「重要なのは、何を持って生まれたかではない。与えられたものをどう使うかだ。」
体型も、体力も、忙しさも、過去の挫折も。
それらはすべて、あなたに与えられた条件です。
でも、それをどう使うかは、あなたが選べる。
トレーナーとして私にできることは、あなたが「変わりたい」と決めたとき、その選択が実を結ぶように、そばで支えることだけです。
ライフスタイルを変えることは、誰にでもできます。
ただし、それは外から強制されるものではなく、あなた自身の中から生まれるものです。
そのきっかけを一緒に探したい方は、ぜひ一度、話だけでも聞きに来てください。
