先週、あるお客さまとこんな話をしました
「何度言っても、親がお酒をやめてくれない。もう疲れました」
その言葉を聞いたとき、トレーナーとして思ったことがあります。
——それ、ダイエットでも全く同じことが起きてるな、と。
「何度決意しても、夜の食欲に負けてしまう」
「運動しようと思っているのに、なぜか体が動かない」
「わかってはいるのに、変われない自分が嫌い」
これ、構造はまったく同じです。
今日はアドラー心理学の 「課題の分離」 を入り口に、自分の身体と健康に向き合う本質的な話をしたいと思います。
「わかってる、でも変われない」の正体
多くの人がダイエットで陥るパターンがあります。
知識は十分ある。何が太るかも知ってる。運動が大事なのもわかってる。でも変われない。
これを「意志が弱い」「自己管理ができない」と片付けてしまうのは、正直もったいない。
アドラー心理学の視点では、「変われない」には理由があります。
それは 「変わらないことで守っているものがある」 という考え方です。
これをアドラーは 「目的論」 と呼びます。
人間の行動には、過去の原因だけでなく、未来に向けた目的がある。
「ダイエットに失敗し続ける」にも、実は目的があるかもしれない。
- 失敗しておけば、「本気出していないだけ」と言い訳できる
- 変わることへの怖さ(周囲の目が変わる、自分のアイデンティティが揺らぐ)
- 頑張っている自分でいることが目的になっている
(参考:岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社, 2013 / Adler, A., Understanding Human Nature, 1927)
「課題の分離」を、自分の身体に使う
ここからが本題です。
アドラーの「課題の分離」——その結果を最終的に引き受けるのは誰か? という問い。
これを、自分自身に向けてみます。
あなたが今夜、何を食べるか。
明日、運動するかしないか。
その結果を身体で受け取るのは、誰ですか?
あなた自身ですよね。
つまり、あなたの健康は 完全に「あなたの課題」 です。
当たり前に聞こえますが、ここが案外できていない。
「他者の課題」を持ち込んでいないか?
ダイエットが長続きしない人によく見られるパターンがあります。
それは、知らずに「他者の課題」を自分の動機にしてしまっていること。
| 他者の課題ベースの動機 | 自分の課題ベースの動機 |
|---|---|
| 「パートナーに綺麗だと思われたい」 | 「自分が元気で動ける身体でいたい」 |
| 「友達に痩せたねと言われたい」 | 「体が軽くなることが純粋に気持ちいい」 |
| 「家族に心配させたくない」 | 「50代以降も自分らしく生きるための投資」 |
| 「SNSでいいねが欲しい」 | 「自分の可能性を自分で広げたい」 |
他者の評価ベースの動機は短期的には強力ですが、長続きしません。
なぜなら、他者の評価はコントロールできないから。
一方、自分の感覚・価値観・人生に根ざした動機は、ブレない。
これは自己決定理論(Deci & Ryan, 1985)でも示されています。
「外発的動機づけ」より「内発的動機づけ」のほうが、継続率・達成率ともに高い。
(参考:Deci, E.L. & Ryan, R.M., Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior, 1985)
「親のお酒」と「自分のダイエット」——なぜ同じ構造か
親のお酒が心配で、何度伝えても変わらない。
この構造を改めて見ると:
- あなたが変えようとしているもの:親の行動(他者の課題)
- あなたが変えられるもの:自分の行動・感情・言葉(自分の課題)
ダイエットに置き換えると:
- あなたが変えようとしているもの(実は):過去の失敗した自分・昨日食べてしまった事実
- あなたが変えられるもの:今日の選択・今この瞬間の行動
過去は変えられない。他者は変えられない。
でも、今日の自分の選択は変えられる。
これがアドラーのいう「課題の分離」を自分に向けた、最もシンプルな解釈です。
パーソナルトレーナーの視点から
セッションの中でよく聞く言葉があります。
「先週、食べてしまいました……」
そのとき私がお伝えすることがあります。
「先週の食事はもう終わった他者の課題、みたいなものです。今日、何を選ぶかだけが、あなたの課題ですよ」
これを聞いてはっとする方が多い。
自分を責めることに使っているエネルギーを、今日の選択に使う。
これだけで、ダイエットの質は大きく変わります。
今日から使える「課題の分離」3ステップ
Step 1|「誰の課題か?」を問い直す
今の動機は、自分の人生のためか?他者の評価のためか?
Step 2|変えられないものへのエネルギーを手放す
昨日の失敗、過去の自分、他人の目——これらはすでに「終わった他者の課題」
Step 3|今日の選択だけにフォーカスする
朝食の一択、階段かエスカレーターか、夜の水一杯——小さな選択の積み重ねが唯一の「自分の課題」
まとめ
親のお酒を心配することと、自分のダイエットに悩むこと。
一見まったく違う話に見えて、根っこは同じ構造でした。
- 変えられないものを変えようとして、疲弊していないか
- 他者の評価を動機にして、長続きしない循環に入っていないか
- 「今日の選択」という唯一の課題から、目を逸らしていないか
アドラー心理学は「自分を責めるな」とは言いません。
ただ、「今日のあなたに、できることをやれ」 と言います。
それで十分です。
参考文献
- 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社(2013)
- Alfred Adler, Understanding Human Nature (1927)
- Deci, E.L. & Ryan, R.M., Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior, Plenum Press (1985)
- 岸見一郎『アドラー心理学入門』ベスト新書(1999)
SQUEEZOOのパーソナルトレーナー・ゆういちが、アドラー心理学に基づくコーチング視点でお届けしています。
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